シナリオ Dream of Circus
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チャプター 1
視界を遮るほど濃い霧が辺りを包んでいた。
霧が揺らめくと2つの人影が浮き出す。
シエル「おい、セバスチャン。
僕たちは女王陛下の命によりノアの方舟サーカスに潜入捜査中じゃなかったのか?」
セバスチャン「はい。その通りです。坊ちゃん。」
シエル「ここは何処かの森の様だが……。」
セバスチャン「此処が英国で無い事だけは確かです。
クスッ。風で運ばれた紙が、よりにもよって坊ちゃんのお顔に。」
シエル「笑ってないで早く取れ。」
セバスチャン「坊ちゃん、此処はどうやら夢ノ国という異世界の様です。
この世界は「ユメ」で繋がっています。
つまり我々は誰かの「ユメ」に反応して、この世界に迷い込んだ。」
シエル「なぜそんなことが解る?」
セバスチャン「この紙にそう説明されております。」
シエル「なっ!? そんなことがありえるわけがない。
それに夢と言うならば、さっさと僕を起こせばいいだろう。」
セバスチャン「一度、夢ノ国へと迷い込んだ以上、そう簡単には抜けられない。
しばらくは、この世界を彷徨う事になる。
此処での出来事は、目が覚めれば一晩の夢に過ぎない。
夢ノ国に何年居ようとも心配は要らない。
もっとも、夢ノ国での死は魂の死を意味する。
フッ、覚めない夢にならぬよう、お気を付けください。」
シエル「どや顔で10代前半の少年が言い出しそうな設定を語るな。恥ずかしい。」
セバスチャン「語ってなどおりません。あくまで、紙を読んだだけですから。」
シエル「まあいい。僕は何年も此処にいる気はないし、死ぬ気もない。
セバスチャン、命令だ。夢ノ国から脱出を!」
セバスチャン「イエス、マイロード。」
チャプター 2
ハムト「じめっとした霧なのニャ。空も曇ってるし、こんな日は家でゲームしてたいニャ。」
テラス「晴れても引きこもってゲームしてるじゃない。」
アレウス「今日は異世界からの客人が来ているのだ。」
ハムト「お客さんニャ?」
アレウス「もっとも、迷い込んでしまったと言うほうが正しいがな。」
ハムト「誰なのニャ?」
トト「セバスチャンさんとシエルさんだね。」
ハムト「それって……。「あくまで」の人達ニャ!!人と言っていいかわからニャいけど!!」
トト「あぁ、ハムのヒトも知ってたか。僕も全巻持ってるよ。」
ルー「あくまで?」
テラス「ぜんかん?」
ハムト「2人にはわからニャい話ニャ。
まぁ、ハムトは基本知らないリアクションで行くニャ。
元ネタを知らない勇者にも安心リアクションニャ。」
トト「ハムのヒトにはかなりのスペシャルゲストってのがわかったはずだよ。」
ルー「セバスチャンさんとシエルさんは、この世界に不慣れです。
勇者様には、お2人の護衛をしてもらいたいのです。」
ハムト「多分、その2人はほっといても大丈夫だと思うニャ。勇者、サインを貰って帰るニャ。」
テラス「なんで、ハムトが2人の事を知ってるのかしらないけど、2人だけじゃないんだよ。
2人以外の人達も、夢ノ国に迷い込んじゃったんだよ。」
アレウス「他の人間が、この世界で命を落としたら大変だ。」
ハムト「今回もあまり楽出来そうにニャい予感……。」
チャプター 3
シエル「なんなんだ。この世界は。まるで悪夢だ。」
セバスチャン「夢ノ国では、魔獣と呼ばれる者が人を襲っていると書いてあります。」
その時、2人の前に奇妙な格好をした一団が現れた。
ルー「はじめまして、私は夢ノ国の神官ルーと申します。」
テラス「私は夢ノ国の神官テラスですっ!!」
トト「ボクは神官のトトですー。」
神官たちは、夢ノ国のこと、勇者のこと、そして彼らが置かれている状況について2人に伝えた。
彼ら以外にもこの世界への来訪者がいることも。
シエル「(おどぎ話から抜け出てきた様な連中だ……)
僕はシエル・ファントムハイヴ。ファントムハイヴ家の当主だ。」
ハムト「ギニャーーーーー!!」
セバスチャン「ああ、この天鵞絨の様な手触り。貴方の毛並みは素晴らしい……。」
ハムト「ハ、ハムトを撫で回すニャ!!ち、力が抜けるニャ!!
ハムトから離れるニャ!!ハムト肉球拳!!」
ハムト肉球拳はセバスチャンにあっさり受け止められた。
セバスチャン「この肉球も素晴らしい。この弾力、まさに夢ノ国っ!!」
セバスチャンは一頻りハムトの肉球を堪能した。
あなたと神官は、それを傍観しているしかなかった。
シエル「セ、セバスチャン。早くその猫から離れろっ!」
セバスチャン「あ、これは失礼しました。この私とした事が、理性が吹き飛んでしまいました。
私はファントムハイヴ家の執事。セバスチャンと申します。
こちらが勇者様ですね。そして、素晴らしい手触りの貴方は?」
ハムト「ハ、ハムトニャ。(そう言えばそういうキャラだったのニャ)
勇者の相棒ニャ。まぁ、なんニャ。ハムトがセバスチャンで勇者がシエルみたいなものニャ。」
トト「ニャハニート族っていう怠け者のいう事なんで気にしないでください。」
ルー「お2人にお願いがあって参りました。この世界に迷い込んでしまった、シエルさんと同じ世界の人々を助けるために
お力をお借りしたいのです。」
アレウス「おそらく、この世界に来る前に深く関わっていた人々が迷い込んでしまった確率が高い。
どうか勇者と共に、その人々を助けていただけないだろうか。」
シエル「……サーカス団の連中も、こちらに来ている可能性が高いな。」
セバスチャン「彼等にこちらで死なれては真相がわからなくなりますね。」
シエル「いいだろう、そちらの「勇者」と行動を共にしろということだな。」
ルー「ありがとうございます!私達は、一旦王都に戻り、この異変を調べます。」
テラス「シエルさん、セバスチャンさん、勇者様とハムトをよろしくお願いします。」
チャプター 4
あなた達は霧で満ちた森を進んでいた。
セバスチャンは優雅に無駄なく、魔獣を打ち倒していく。
シエル「勇者……と呼んでいいか?
いくつか説明をしておきたい。
僕達は、今「ノアの方舟」と言われるサーカス団に潜入捜査をしている。」
ハムト「なんでニャ?」
セバスチャン「ノアの方舟の一座が去った後、街から子供が消えると言われているのです。」
ハムト「人攫いニャ!!怖いニャ。」
シエル「それを調べるのが僕達の役目だ。
サーカス団の中では僕はスマイル。セバスチャンはブラックと呼ばれている。
勇者にもサーカス団に共に入ってもらうことになるかもしれない。」
セバスチャン「彼等が、この世界で魔獣に襲われ、死なれては困るのです。」
霧の奥に色とりどりの灯りが幽かに瞬いていた。
楽しげな音楽と人々の賑わう声が聞こえた。
ハムト「もしかして例のサーカスニャ?」
チャプター 5
たくさんの人々がノアの方舟一座に訪れていた。
団員たちは、いつもとは違う客層に戸惑っていた。
ビースト「ねえ、今日の客層変じゃない?」
ダガー「姉さんもそう思います?みんな仮装パーティーみたいだ……。」
ジャンボ「しかも、おとぎ話の様な怪物までいますね……。」
ピーター「こりゃ、一体なんなんだ。みんなで夢でも見てるのか?」
ウェンディ「これ本当に現実なのかい?それとも夢?みんな本物みたいじゃないか。」
スーツ「ふむ。我々が本来いるはずの世界とは違うようです。」
ドール「そんな事より、お客さんが、どんどん入ってきちまってる。」
スネーク「Show Must Go On ショーは続けねばならない
ってワーズワスが言ってる……。」
ジョーカー「スネークの言うとおりどすえ。
国籍も世界も関係ない。ウチらの芸でお客はんを笑顔にする!!
それがプロや。」
かくして、夢ノ国でノアの方舟サーカスの幕が開かれようとしていた。
チャプター 6
ブラック「そろそろ開演の様ですね。私達も急いで合流しましょう。」
スマイル「結構、長い間離れていたが、大丈夫か?セバ……ブラック?」
ブラック「ええ、どうやら此処では我々の都合の良い様に事が運ぶようですので。例外もありますが……。」
ハムト「セバスチャンはともかく、シエルは笑っちゃうのニャ。仏頂面ばかりなのにスマイルニャ。」
スマイル「うるさい!!」
ブラック「勇者さん。私共は一度サーカスに戻ります。
サーカスに魔獣が乱入しないように倒していただけると助かります。」
ハムト「それぐらいお安い御用ニャ。」
チャプター 7
ジョーカー「レディス、エンド、ジェントルメーーーン。
お嬢はん、アンド、旦那はーーん!
本日はノアの方舟サーカスにようおこしやした。
ウチは道化師(ジョーカー)と申しまんねん。どないぞお見知りおきを。」
ジョーカーの挨拶の後、次々と披露される魅惑的なショーの数々。
夢ノ国の住人たちは、はじめてみるショーに魅了された。
ジョーカー「さて、最後を飾るのはサーカスの花形。猛獣使いのお出ましどすえ!!」
その時、ビーストの目の前の空間が歪みはじめた。
ビースト「な、なに!?」
スマイル「しまった。魔獣は突然現れる事もあるのか!?ブラックあいつを……。」
ブラック「その必要は無い様です。」
ハムト「勇者、あの魔獣を倒すのニャ!!」
チャプター 8
これほどスリルと興奮に満ちたショーは他にはないだろう。
夢ノ国の勇者が目の前で魔獣を倒すのだ。
あなたの一撃で魔獣は黒い霧となって消滅した。
観客は拍手喝采。大盛況の中ショーは終わった。
もちろん、観客は、魔獣が出現したという事ですぐに帰らされてしまった。
ジョーカー「美味しいところは、あんさんに持ってかれてしもたけど助かったわ。おおきに。」
ビースト「アタシからも礼を言うよ。助けてくれてありがとう。」
ブラック「ジョーカーさん。その方たちは私達の友人です。」
ジョーカー「確かに、ブラック並みに何でも出来そうやなぁ。」
スマイル「また、魔獣が現れると厄介です。しばらく勇者さんに護衛を頼んでは如何でしょう?」
ハムト「ハムトと勇者に任せておくニャ!」
サーカス団の同意を得て、勇者とハムトは護衛として、サーカス団に同行することになった。
チャプター 9
夢ノ国の次元の狭間――――
黒キ者「面白い連中が来ているな……。
俺と同じ黒を纏う者もいるのか……。黒い執事か……。
奴らを利用するのは難しいな。
しかし、奴らと一緒に来た人間達の負の感情は利用できるな。
アッアッアッハッハッハッハヒイ!!」
チャプター 10
ノアの方舟サーカスは各地で人気を博し、遂に、夢の国の王都で興行する事になった。
観客は、真っ暗な天幕の中、息を潜めて開演を待っている。
観客の期待が頂点に達した時、ぱっと煌びやかな照明が灯された。
ジョーカー「レディス、エンド、ジェントルメーーーン。
お譲はん、アンド、旦那はーーん!」
幕は上がった。
ショーはつづけなければならない。
チャプター 11
歓声と拍手が止まない天幕。
その中にあなたの姿はない。魔獣の気配を色濃く感じ、外へ出たのだ。
セバスチャン「やはり、貴方は気付かれたようですね。
人々の闇を求め、愉しむ者は、どの世界にも居るものです。
姿形まで似ているのは不愉快極まりないですが……。」
周囲の空間が歪み、その一点が集約されると黒い塊となっていった。
黒い塊は、ゆっくりとセバスチャンと似た姿になった。
黒キ執事「アッアッアッハッハッハッハヒイ。これで俺も執事だ。」
シエル「品の無い笑い方だ。」
黒キ執事「そんなに嫌わないでくれよ。この笑い方は俺のトレードマーク。
キャラ付けってやつなんだからよ。」
セバスチャン「執事とは、影のように主人に付き従う者。仕える者さえ居ない貴方が執事を名乗るとは。」
黒キ執事「手厳しいねぇ。あんたの力は素晴らしいぜぇ。特に黒い所がイイ。馴染むぜぇぇ。」
セバスチャン「夢ノ国に訪れた者の力を使えるようになる。それが貴方の力ですか。」
黒キ執事「俺は、それを量産する事が出来る。こんな風にな。」
黒キ執事は、分身を生み出し、瞬く間に周囲を取り囲んだ。
黒キ執事「俺は、あのサーカスの負の感情が欲しい。
奴らは、深い闇を持っている。きっと良い魔獣が生み出せる様になる。
この複製した体を使ってショーをぶっ壊せばさぞかし良質の絶望が生まれるだろうぜ。アッアッアッハッハッハッハヒイ。」
シエル「お前が僕達を呼び寄せたのか?」
黒キ執事「いや、奴らの思念だね。此処では無い何処かに行きたかったんじゃないか。
さて、お喋りは終わりだ。楽しいダンスの時間といこうぜぇ!」
シエル「セバスチャン、命令だ。この目障りな偽者共を始末しろ。」
セバスチャン「イエス、マイロード。」
チャプター 12
黒キ者「アッアッアッハッハッハッハヒイ。流石、勇者だな。変身が解けちまったぜ。
分身も、あっと言う間に消滅させられちまったしな。」
セバスチャン「ファントムハイヴ家の執事たるもの、この程度の事が出来なくてどうします?」
黒キ者「ただの執事という訳ではなさそうだな。さしずめ、死神か。」
セバスチャン「死神などではございません。私は、あくまで執事ですから。」
黒キ者「アッアッアッハッハッハッハヒイ。
面白い奴だ。次に会う機会があれば、お前の力をもっと知りたいのだがな。
坊ちゃん。あんたの悪夢が俺を引き寄せるのかもしれない。その時は、また会おう。」
シエル「二度とお前に会う気はない。」
黒キ者「そちらの黒い執事さんもな。アッアッアッハッハッハッハヒイ。」
黒キ者は霧と化して、ゆっくりと掻き消えていった。
セバスチャン「さて。私共の出番には何とか間に合いそうですが、どうなさいますか?」
シエル「割り振られた仕事は、やるぞ。」
セバスチャン「御意。では参りましょう、スマイル。」
シエル「オイッ!」
チャプター 13
ノアの方舟サーカス団の興行は終わりを告げた。
鳴り止まない拍手と歓声。彼らのショーは夢ノ国の住人たちの心を打ったのだ。
ジョーカー「皆はんオツカレさーん。」
ルー「夢ノ国の住人たちを楽しませてくれたお礼にご馳走はこちらで用意しました。」
テラス「食べ放題、飲み放題だからね!!」
トト「誰よりも最初に食べてるけどさ。そこのハムのヒト。何もしてなかったねぇ。」
ハムト「うるさいニャ。今回はゲストに出番を譲っただけなのニャ。」
アレウス「とりあえず今日はたっぷり食べ、休んでください。」
宴は団員達の笑い声に包まれた。
団員たちは酔いつぶれ疲れ果てるまで夜通し騒ぎ続けた。
やがて、その声は小さくなっていった。
朝焼けが広がる前に、ノアの方舟一座は消え去っていた。元の世界へ帰ったのだ。
セバスチャン「帰って行かれた様ですね。
元の世界へ戻れば、ただの人間である彼らは、この世界の出来事を一切覚えてないでしょう。
楽しかった思い出も全て……。もちろん坊ちゃんも。」
シエル「くだらない遊戯に時間を無駄にした事を覚えていないなら好都合じゃないか。」
セバスチャン「確かに。
それでは、勇者さん。我々はそろそろ失礼いたします。」
シエル「おい、セバスチャン。その手に抱えてる物を置いていけ。」
セバスチャン「流石に無償奉仕は割りに合わないと思ったのですが……。残念ですね。」
シエル「僕達の世界に、そいつが来たら面倒だろう!!」
ハムト「ちょ、ちょっとハムトを拉致らないでニャ!!」
セバスチャン「ハムトさんは、坊ちゃんの猫アレルギーが出ない希少な方なので残念です。
それでは、勇者さん、ハムトさん。良い夢を。」
セバスチャンとシエルの姿が朧げに揺らめくと、2人の姿は瞬く間に消え去っていた。
ハムト「帰っちゃったニャ……。」
テラス「あー、挨拶出来なかったー。」
ハムト「遅いのニャ。残念娘。」
ルー「勇者様。今回もお疲れ様でした。」
ハムト「セバスチャンとシエルは、ハムトと勇者みたいだったニャ。」
トト「えー、セバスチャンさんとは月とスッポンじゃないかー。」
ハムト「ニャに言ってんのニャ。ハムトも本気出せば、執事になれるニャ。
あくまで。」
トト「ニートですから。」
ハムト「ニート言うニャ!!」
真実に辿りつくため、セバスチャンとシエルは、元の世界へ帰っていった。
サーカスが作り出すショーは、非日常を生み出す異空間である。
彼等が元の世界に残す物は喜びのか。それとも哀しみなのだろうか。
終幕の先に待ち受けるフィナーレを知る者はいない。
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